町では、平成19年12月25日に「笠松町道徳のまちづくり条例」を制定し、それに基づき「道徳のまち笠松委員会」をこれまで4回開催し、基本指針を策定しました。以下に同委員会の「道徳のまち笠松」にこめる願いについて記載します。

はじめに

 「道徳のまちづくり」というと、「今、どうして道徳?」と思われる方も多いことでしょう。笠松町は約40年間にわたり、学校教育を中心として道徳教育を積み上げてきたまちです。むしろ、「道徳では優れたまちのひとつである....」と考える方もおられると思います。
 確かに今、笠松町に特別な道徳的問題があるというわけではありません。しかし、笠松町に限ったことではありませんが、このままでよいだろうかと心配することはいくつかあります。例えば、地域社会や会社などで年配の世代から若い世代への受け継ぎがうまくいかない。同じ世代の間でもかかわりが少なくなっている。結果として、互いに気持ちが十分通いあわない現実があります。また、ペットの散歩のさせ方、投げ捨てられている空き缶やペットボトルに見られるようにマナーやルールに対する意識の弱さも感じられます。家庭において親から子、孫へと受け継がれてきた伝統や道徳心・生活習慣に対する考え方も少しずつ変わり、家庭で戸惑う姿も見られます。
  一方では、もっと住みよいまちにしようとする積極的な動きがあります。高齢者への福祉活動、住民による清掃活動、青少年の育成や保護にかかわる活動、地域ごとの三世代ふれあい活動、グループによるまちの歴史を学び伝える活動、助け合って共に子育てする活動など福祉、環境美化、青少年育成、文化活動など多くの分野に及んでいます。
 急速に変化発展する社会の中で、共に豊かに生きるために、人として地域としてのあり方を見直し、新たな行動をおこそうとする動きが各地に広まっています。この笠松町のまちをつくっているのは、私たち町民です。歴史と伝統あるこの笠松町に生まれ育ち生活していることに誇りをもち、さらに住みよい豊かなまちにするために、今、「道徳のまちづくり」が必要だと考えているのです。

道徳のまちとは

 「道徳のまち」と言えば、どんなまちをイメージしますか。堅苦しいとか古めかしいと感ずる方があるかもしれません。私たちは「道徳のまち」を“生きがいをもち、安心して暮らせるよう道徳性を大切にするまち”と捉えています。これはごく当たり前のことのようですが、なかなか難しいことです。道徳性を大切にするには、生活を見つめ、自ら道徳性を高める努力が必要だからです。しかし、こうした町民の道徳性を高める営みが積み重なれば、それはやがて笠松町の道徳的風土となり、まちの至るところで道徳的雰囲気を漂わせることになります。
 こうした笠松町の道徳的風土は、道徳心を大切にする次代を担う人を育てることになります。その中で、私たち大人が守るべきことや伝えるべきことを具体的な姿ではっきりと青少年に示せば、より確かな道徳心をもった青少年を育てることにつながります。
 このように『道徳的風土としての雰囲気が感じられるまち』、『次代を担う笠松人が育つまち』を「道徳のまち」の姿として描いています。こうした風土づくりをするのは、今を生きる私たち笠松人です。一人ひとりの力は小さくても、その思いをひとつにしてみんなで取り組めば笠松町は大きく飛躍し前進します。

まちづくりを町民の道徳心で

 「まちづくり」というのは、一般的に道路や上下水道、さまざまな施設や制度を整備することを指しますが、ここでは、“道徳性やマナー・ルールを大切にする心を養い、町の基盤となる人の力を高める”ことと考えています。
 ところで、道徳といえば青少年の道徳性を育むことだと考えるのが常識となっていないでしょうか。今回、全国に数少ない「道徳のまちづくり条例」を笠松町で制定したのは、そうした従来の考えから一歩踏み出し、「まちづくり」の視点から道徳に取り組もうと考えたからです。現在、笠松町には約2万人の人々が農業、商業、工業、サービス業、教育、文化などさまざまな仕事にかかわりながら暮らしています。こうした老若男女すべての町民にかかわる課題として道徳をとらえています。
 わが国では一昨年より耐震強度偽装に始まり、食品の消費期限・製造日・産地の偽装あるいは賞味期限切れの惣菜販売など次々と問題が表面化し、この種の問題は今も指摘されています。問題にかかわっているのが、子どもではなく立派な大人であることはまことに憂慮すべきことです。世の中どうなっているのかといぶかる方も多いことでしょう。こうした問題の根幹は、人の心の問題であり、とりわけ道徳性・道徳心にかかわるものと考えられます。金銭や効率を特に重視する現代の世相に対し、人命の大切さ、人との共生、環境保全など今大切にすべきことを企業・商店はじめ社会全体が認識しあわなくてはなりません。こうしたことをまち全体で高めあい「笠松町」とあるだけで全国に信頼される「まちづくり」を進めたいと願っているのです。
  では、そのために私たちは、今どんなことを考えればよいのでしょうか。笠松町では30年前に町民憲章を制定しました。今回は、この憲章の精神を大切にして、「共生」と「人間尊重」に溢れた風土づくりに向け、今大切にすべきことを三つとりあげました。

  1. 人と人とのつながりをつくる
    • 笠松町でも、家族の少人数化が急速に進んでいます。一人世帯と二人世帯の割合が増加し、合わせると全世帯の5割に迫ろうとしています。また、核家族化により世代と世代のかかわりが弱くなり、親から子、孫へと受け継ぐ意識や年長者を尊敬し、いたわる気風も薄れています。人と人とのつながりが弱まれば、地域社会や家庭はその力をいちじるしく低下させることになります。地域の中で、声をかけあったり、あいさつを交わしたり、回覧板をわたす時に一声かけたり、買い物をする時に声を交わしたりして人とのつながりを積極的につくっていきたいものです。こうした人と人とのつながりは、さらに笠松町を訪れる人をもてなす心にもつながってきます。また、家庭にあっては親子や祖父母とのふれあいを大切にし、受け継ぐ心を育てたい。このような行動や態度の奥にある道徳心が、結果として思いやりと活気ある『笠松人』をつくり、人とのふれあいや災害など緊急時の行動にも生かされることになります。
  2. 自ら社会づくりに参加する
    • 前に述べたように、笠松町ではまちをよくするため、町民による自発的な活動が広まっています。地域清掃やリバーサイドカーニバルなどさまざまな町内行事の中でボランティア活動が行われるようになってきました。自分たちで知恵を出し合ってできることは、自分たちでやる。一人ひとりの意志や心をはたらかせることに喜びを感じ、手づくりの活動を通じて社会の一員としての役割を果たそうとする。この態度は、これからの社会の中でますます大きな比重を占め、住みよいまちづくりに貢献すると考えられます。地域での行事や清掃、福祉や教育のボランティア、青少年育成や見守り活動などまちづくりのさまざまな面で多くの力が結集され、いっそう豊かで潤いのあるまちをつくることになります。このような笠松人の社会的な行動力の背景をなす道徳心は、笠松町のまち全体の機能を活力あるものにしていくことになります。
  3. 自分も他人も尊重する
    • 笠松町では、町をあげ徹底したごみ分別収集が行われ、以前にも増して美しい町づくりや環境保全に取り組んでいます。最近では、環境問題のみならず情報・安全にかかわる問題も多く指摘されるようになってきました。より多くの人が共に生活するために規則やルールがいっそう大切なものになっています。身近なところでは、交通安全、施設利用、ごみ分別、情報管理、仕事を進めるうえでの規則やルールなどがあります。一人ひとりの考えや行動は尊重されなければなりませんが、その考えや行動は相手やまわりの人にとってもよく、喜びあえるものかどうか規則やルールに照らして考える道徳心やマナーが、今後ますます大切になります。こうした道徳心が人と人との信頼関係の構築、安心安全なまちづくり、円滑な問題解決など、みんなが互いを尊重しあいより住みやすい笠松のまちをつくることにつながります。 

 考えるべき内容は他にもあるかと思いますが、この三つの項目を歴史と伝統を受け継ぎ、個性あるまち笠松に住む『笠松人のこころ』としました。

『笠松人のこころ』を核にして

  この“笠松人のこころ”を常に意識しながら、私たち町民全体が取り組めば、私たちのまちはいっそう生きがいのある、喜びを分かちあい安心して暮らせるまちになると確信します。この心を意識しあえるように互いに関心や意識を高めあいたいものです。しかし、関心や意識が高まっても、具体的な人と人とのふれあいの中で生かされなければ、道徳心を大切にする態度が高まることも育つこともありません。具体的な行動をともない体験を通じて、はじめて“笠松人のこころ”がより現実的なものとなるのです。この町で共に生活する人間として、これまで笠松町で受け継がれてきた伝統や歴史を縦の軸とし、同世代や仲間の中での横のかかわりを大切にしながら、みんなで「道徳のまちづくり」に取り組もうではありませんか。こうした取り組みは、現在進められている美しいまちやふれあい豊かなまちづくりの基盤となり、まちの大きな力になると確信します。笠松町を訪れる他の地域の人々が『笠松人のこころ』を笠松町の道徳的風土として感じとっていただければ、笠松は価値の高いまちとしていっそう存在感を高め、さらに発展していくに違いありません。最後に、この“笠松人のこころ”を具体的にどのように広め、どのように行動化・態度化していくかについては、今後笠松町のみなさんがいろいろな機会と場でじっくり考え話し合い、「こんなことがやりたい」「こんなやり方がある」というように、みなさんの心や体になじむものとして進めていただけることを心から期待するものです。

お問い合わせ

教育文化課

学校教育担当

電話:058-388-3926

ファクシミリ:058-388-3233

教育文化課へのお問い合わせフォームはこちら